残暑いまだ厳しい平成23年(2011) 9月19日、「第８回　お江戸散策　赤坂・青山界隈」を行いました。最初の散策所は赤坂見附駅から北に向かい弁慶橋を渡って、清水谷公園に行きました。この付近は明治の元勲大久保利通が暗殺された所で、公園にはその当時最大の国家指導者を失い世の中が受けた衝撃と深い哀悼の心情が大きな石碑の裏面に書かれていました。この公園北側の諏訪坂に沿って行くと文芸春秋本社、城西大学、元赤坂プリンスホテル等が眺められ、ほんのしばらくで赤坂見附跡に出ました。見附とは江戸城の外郭に位置して、外敵の侵入を見付けるために設けられた監視所で、維新後、多くは取り壊されたが、ここ赤坂見附跡地には当時の写真が説明板付きで載せてあり、その様子が偲ぶことができました。ここから南へ４～５分の所に旧華族女学校跡地がある。津田塾を設立した津田梅子が教鞭を執っていたところで、現在、参議院議長公邸になっています。公邸脇の三辺坂を下り日比谷高校前の坂を登ったところが次の散策地、日枝神社です。江戸時代は山王権現として将軍家にも庇護されていて隆盛を誇り、明治以降も皇城鎮護の官幣大社という格式で、都内有数の人気神社だけあって結婚式やお宮参りの人たちで賑わっていました。ここからは一旦、出発地の赤坂見附駅に向かい、駅近くの赤坂不動尊をお参りしてから、ＴＢＳ放送局前の道を抜けて、三分坂を下り、坂の右手にある築地塀で囲まれた報土寺を拝観しました。当寺には伝説の力士・雷電為右衛門の墓がある。墓参してから、浅野藩の中屋敷があった赤坂氷川公園に進みました。この公園で、しばしの小休止を取り、朝からアップダウンを繰り返して、疲労した脚を休めました。続いて、近くにある２ケ所の勝海舟邸宅跡を見学しました。邸宅の1つは咸臨丸に乗って渡米した時や坂本龍馬に世界情勢を説いて転機を与えた時に住んでいた所、もう一つは明治に入ってから亡くなるまで住んでいた邸宅跡です。ここには資料展示室があり、遺品、石碑、書籍類を見学しました。勝海舟が歴史に残る江戸城無血開城で多くの人命と財産を救った功績が燦然と輝くように表現されていました。海舟がここ赤坂を気に入っていたこともわかりました。次に向かったところは赤坂氷川神社で、八代将軍吉宗に庇護されて、栄えた神社で前日まで大祭が行われていたらしく、境内は祭の後片付けで雑然としていました。境内には港区で２番目に大きいというイチョウの木があり、神社の御神木のように慄然と聳えていました。ここから六本木方面に向かい着いたところは三河台という台地の一角で、ここには志賀直哉の父の大きな邸宅があったところで、裕福な家庭に育った直哉の生活の一面を知りました。この邸宅跡地の前が江戸時代長州藩の中屋敷のあった所で、その跡地の北半分は港区檜町公園になっていて、北半分は東京ミッドタウンやサントリー美術館になっています。このミッドタウンで昼食を取り、涼を取って、消耗した体力を補いました。

昼食後、向かったのは旧乃木邸で、乃木希典は日露戦争で作戦ミスから多くの犠牲者を出して非難を受けましたが、軍人としての行動は高潔で、敵将に対しても礼儀を尽くし、世界から称賛されていた一面がありました。次の散策地は青山霊園。ここには江戸から明治、大正、昭和に至る多くの著名人が眠っていて、限られた時間の中では見ることができないので大久保利通、関東大震災で復興院長として果敢で、大胆な推進を図った後藤新平、坂の上の雲の主人公、秋山好古、広瀬武夫、破傷風菌やペスト菌を発見し、多くの人々を救済し、日本最初のノーベル賞候補に挙がった医学博士・北里柴三郎、難病脚気から人々を救った海軍医官・高木兼寛など、多大な功績を挙げながら世間から忘れかけられている人の墓をお参りして故人を偲びました。次に訪れた所は曹洞宗大本山永平寺の東京別院である長谷寺（ちょうこくじ）で、ここには楠で彫られた高さ10メートル余りもある十一面観音菩薩像を拝観できました。境内には喜劇王エノケンさん、歌手坂本九さんの墓があり線香を立てて冥福を祈り「上を向いて歩こう」をハーモニカの伴奏で合唱しました。続いて、ここから200m程北にある天才画家・岡本太郎の旧宅兼アトリエになっている岡本太郎記念館を訪れました。先にテレビドラマで紹介されたことから人気があり、多くの見学者が入っておりました。次の高野長英終焉の地は、ここから離れているので割愛し、解説だけにしました。その解説から長英が毎日恐怖心に襲われている苦難の逃亡生活が伝わってきました。最終散策地は、青山学院大学構内で、ここはかって伊予西条藩上屋敷だった所でした。ここでは同校の卒業生平岡精二が作曲し、ペギー葉山が歌って大ヒットした歌曲「学生時代」の石碑前で、記念撮影をして、本日の散策を終了しました。この後、同校写真部ＯＢによる写真展を見学させていただき、出展者から、撮影場所の様子やその撮影技術のノウハウをご教授いただきました。（石井義文）